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華岡青洲の紹介

紀北分院は和歌山県北部をゆったりと流れる紀ノ川の中流部に位置し、北に和泉山脈、南に高野山をいただくのどかな田園地帯に建っています。紀北分院は昭和13年に設立され(当時は郡の組合病院)、この地方の基幹病院として長い歴史を有しております。しかし、病院の設立からさかのぼること百数十年前の江戸時代、すでにこの地で日本中に名の知れた医師が診療を行っていました。その名は華岡青洲。青洲は世界で初めて全身麻酔下の外科手術に成功したことで有名であり、この偉業は紀北分院から紀ノ川をほんの数キロ下った平山村(現在の紀の川市)で達成されました。

紀北分院遠景。和泉山脈と紀ノ川紀北分院遠景。和泉山脈と紀ノ川

麻酔薬完成にいたる経緯は作家有吉佐和子が小説「華岡青洲の妻」に著し、舞台やテレビドラマでも取り上げられ、現代日本でも青洲の名前は全国的に知られています。ただ、この小説のメインテーマは嫁姑問題であり、両者の確執が見事に描写されている反面、青洲自身については少々影が薄いと言わざるをえません。ここでは青洲の業績を、現代医療との関係の中で紹介いたします。

華岡青洲の時代

華岡青洲は1760年(宝暦10年)に紀州平山でやはり医師であった父直道の長男として生まれ、亡くなったのは1836年(天保6年)。青洲が生きた時代は江戸時代末期で松平定信が寛政の改革を行い、杉田玄白、伊能忠敬、葛飾北斎が活躍した頃、欧米ではアメリカ独立戦争やフランス革命がおこり、ナポレオンが皇帝に就いた頃でした。